日本の公共事業
「公共投資が多すぎる!」とか「土建大国!」とか「道路族!」などと、日本において公共投資を危険視する風潮は今も根強くあります。
これらはきちんとした根拠に基づいているか見てみましょう。
現実には、日本の公的固定資本形成は1990年代のピーク時から見て5割から6割にまで削っています。
これは金額で見ても、対GDP比で見ても同じです。
内戦でもしているならともかく、このような予算の減り方をしている国は世界中見回しても日本しかありません。
普通は、国家の成長と共に徐々に増加します。
公的固定資本形成が対GDP比で4%程度というのは、欧州ではフランス並みということになります。
「フランスは同じ先進国だから、同程度なら平気じゃないか」と思われるかもしれません。
実は、地理的条件が大きく違います。
まず、フランスはほとんど地震が起こりません。
建築を見てもよくわかる思います。
翻って日本は、プレートが4つも噛み合い、マグニチュード6を超えるという大型地震の2割が集中するという、地震大国です。
また、フランスは国土が7割がた平地です。
大河がゆったりと流れ、大規模な農業が行われているイメージは誰でも想像できると思われます。
日本はというと、国土は山ばかりで、川は短くて急流です。
歴史的に水害に悩まされてきましたし、少しでも移動しようとすると山に阻まれます。
気候面においても日本は台風が頻繁に上陸しますが、欧州はそういったことはありません。
これらの諸条件を比較して、GDPに占めている公的固定資本形成が同程度というのは、国家ごとの成り立ちを無視していると言われても仕方のない事です。
さらに、現在の日本はインフラストラクチャーの60年経過による劣化が問題となっており、新規の工事以外にも整備にすら多大な需要があります。
インフラは生活と産業の基盤となるものです。
この崩壊は、当然ながら他の分野へ非常に大きな影響を及ぼします。
東京一極集中も問題視されますが、これもインフラの未整備によるものです。
なぜ東京に全てが集中するかといえば、そこに全てが揃っているため、高い地価などのデメリットを差し引いても利便性というメリットが上回るからです。
インフラ整備によって離れた地域が短時間で接続されると、混雑した場所でなくても仕事や生活が成り立つようになります。
そうすると商業圏は緩やかに拡がり、地方に仕事や人口が分散するようになります。
これは安全保障上も非常に重要です。
内部で有機的に繋がっているというのは防衛力を高めます。
状況に応じて戦力を機動的に動かせるためです。
インフラはどこまで整備しても他国へ攻め込む力には使えません。
もし、軍事費の高騰を嫌いつつ、国家の安全保障も高めたいという方々がおられるなら、本来、インフラの整備にこそ注力するよう声を上げるべきです。
現在の日本には財政的制約がありません。
予算に悩む必要がないのです。
いまこそ、インフラ整備に力を入れるべきなのです。