経済用語から見る日本経済、国債編
『日本国債』でよく話題に上がるのが、「国債の金利の支払いで政府が破綻する」という議論です。
ギリシアの例などと比較することで日本も危険であると訴えるこの論は、果たして正しいのでしょうか。
まず、外国向けに発行された国債について。
こちらは全体の6%に過ぎません。
なぜ外国向けの国債が問題になりやすいかと言えば、国債が外貨建てになっている場合があるからです。
外貨建ての場合は、支払いに外貨を使用しますので、外貨の準備が不足してしまうと支払いを履行できないという局面があり得るわけです。
ところが、日本は外国向けの国債も含めて、全て日本円建てで発行されています。
政府は通貨発行権を持っているため、日本において日本円が枯渇することはあり得ません。
よって、日本円建ての日本国債が債務不履行になることはないのです。
ここで少し疑いを持たれる方もいるかもしれません。
仮に、日本国債の大量の利払いが発生して、それを補う為に通貨をたくさん発行したとして、それによって何か良くない影響があるのではないか。
日本円が市場に大量に供給されたとして、影響があるとすれば、インフレ期ならばインフレが促進される可能性はあります。
いわゆるインフレ圧力ですね。
しかし現在の日本はデフレ不況。
現実に、日本は金融緩和によって市中にお金を増やしましたが、金融政策単独ではデフレを改善することさえありませんでした。
こうして見ると、ではなぜギリシアでは危なかったのでしょうか。
ギリシアは、ギリシア国債を共通通貨ユーロ建てで発行していたためです。
共通通貨は、自国内で自国政府の意思では発行できません。
よって、国債の支払いに困った時も、インフレ圧力を甘受して通貨発行という手段さえ取れないのです。
これは、ギリシアだけの問題ではなく、ユーロに加盟するスペインなどでも全く同じ問題が起こっています。
共通通貨システムとは、自分の国の財政・金融政策の主権を多国間に委ねるシステムということになります。
自分が困っても、自分でなんとかすることができなくなるのです。
ここまで自国通貨建てと、他国通貨あるいは共通通貨建ての違いについて見てきましたが、他の論はどうでしょう。
例えば、国債の発行を続ければ市中に国債が溢れていずれ買い手がつかなくなる、というものがあります。
この場合は、日本銀行に買い取ってもらえば済みます。
いわゆる日銀の買いオペです。
国債の日銀引き受けを行うと、政府は利払いからも解放されます。
日本銀行は日本政府が株式の55%を保有する子会社であるため、金利が連結決算で相殺される為です。
そもそも、現在、日本国債10年物の金利は0.02%で世界屈指の低さを誇っています。
金利が低くて利回りが悪くても買われるから、より金利が下がるのです。
市場から日本国債の需要が消え去ることはまず当分ありません。
このように、日本国債は世界的に見ても非常に安定的な資産で、かつ、日本政府が支払いに困ることもあり得ません。
国債の増発は、ニュースなどで殊更に危険視されますが、よく見れば普通の経済活動に過ぎず、むしろ日本は他国と比べて非常に安定しているということがわかります。