日本の進まない電線地中化、実は3つのデメリットは全て解決可能だった。
電線地中化のメリットはなんでしょうか?
そして、デメリットは?
両方を比較して今後の日本の電線はどうあるべきかを考えてみたいと思います。
電線地中化のデメリット
①権利関係が複雑である
電線そのものについても電力会社や電話会社、加えて道の権利については国道や県道など、多くの行政や自治体が関わってきます。
工事に際してこの権利調整という手間が、電線地中化を妨げる原因の一つとなっているのです。
しかしこれは、政府が方針を示してしまえば済むことであり、行政手続きを一本化する法案を作れば解決します。
現状、それを行っていない政府の対応の遅れは指摘できるでしょうが、政策として解決できる以上、国民と政治家がしっかりしていれば大丈夫でしょう。
②復旧に時間がかかる
電線が空中に架かっていれば、断線などの故障の際に修理箇所がすぐにわかり、復旧の手間が節約されます。
しかし電線が地中にある場合、修理箇所がすぐには判断できない上、復旧工事の度にイチイチ掘り起こさねばならず、時間が掛かってしまうという問題があります。
この点については、現状では電線地中化のメリットとトレードオフの関係にあります。
そのメリットとは、電線地中化は災害に強い、という点です。
これは電線地中化の最大のメリットであると言えます。
災害に強いとはどういうことかと言うと、まず、地上より地中の方が地震などの影響を受けにくいという点です。
地震がきても、地盤と一緒に揺れ動く為、損傷が軽くなります。
さらに、大規模な地震がきた際に電線地中化をしていない場合は電柱が道路上に倒れてしまい、緊急車両の通行に非常に大きな支障をきたします。
こちらの方がより重要な点になります。
震災直後に道路が使えるか使えないかは、まさに生死を分けます。
デメリットとして電線そのものの復旧に時間がかかると書きましたが、災害の直後に車両の通行を妨げる可能性のある電柱と、復興に合わせて直していける電線では緊急度が違うとこがわかると思います。
また、現状ではトレードオフとも書きましたが、復旧箇所の発見などには今後ドローン技術の発達により解消できる部分があります。
これらを踏まえて、二番目の論点も地中化に反対するには材料に乏しいように思えます。
③予算が掛かる
電線は地中化するには多大な費用がかかります。
これも電線地中化の進行を遅らせる要因となっています。
しかしこの点も、現在のデフレ不況下の日本ではデメリット足り得ません。
むしろお金がかかることはメリットです。
現在は電線地中化の費用を国と地方と電力会社で分担していますが、こ3つの内で国だけは予算の制約がありません。
政府が負担すれば予算の問題は吹き飛ぶのです。
政府は国債を発行して予算を増やすことができます。
この国債、日本銀行が引き取ってしまえば利払いすらありません。
なにせ、日本銀行は日本政府が株式の55%を保有する子会社だからです。
子会社との間のお金の貸し借りは、連結決算で相殺されます。
日本の財務問題などその程度のものだったのです。
また、国債を日銀が引き受けることで市中にお金が増えます。
いわゆる金融緩和ですね。
この影響は健全なインフレ好況下ではさらなるインフレ圧力になるでしょうが、デフレ不況下では軽微です。
現実に、日銀は異次元の金融緩和として国債の買いオペレーションを実施しましたが、デフレ不況から抜け出すような景気底上げ効果がないのはご存じの通り。
このように、予算制約も存在しないことが明らかです。
むしろ、金融緩和に合わせて財政出動になるので、デフレ脱却への大きな力となることでしょう。
以上、電線地中化について代表的なデメリットは全て解決可能であることがわかったと思います。
電線地中化について語る際に、景観の問題ばかりクローズアップされがちですが、本来は災害に対する安全保障の問題であり、景観の改善は副次的なものです。
景観について取り上げ、本来の電線地中化のメリットを矮小化していては健全な議論とは呼べないと思います。
日本でより早く、電線地中化が進むことを祈ります。
日本の公共事業
「公共投資が多すぎる!」とか「土建大国!」とか「道路族!」などと、日本において公共投資を危険視する風潮は今も根強くあります。
これらはきちんとした根拠に基づいているか見てみましょう。
現実には、日本の公的固定資本形成は1990年代のピーク時から見て5割から6割にまで削っています。
これは金額で見ても、対GDP比で見ても同じです。
内戦でもしているならともかく、このような予算の減り方をしている国は世界中見回しても日本しかありません。
普通は、国家の成長と共に徐々に増加します。
公的固定資本形成が対GDP比で4%程度というのは、欧州ではフランス並みということになります。
「フランスは同じ先進国だから、同程度なら平気じゃないか」と思われるかもしれません。
実は、地理的条件が大きく違います。
まず、フランスはほとんど地震が起こりません。
建築を見てもよくわかる思います。
翻って日本は、プレートが4つも噛み合い、マグニチュード6を超えるという大型地震の2割が集中するという、地震大国です。
また、フランスは国土が7割がた平地です。
大河がゆったりと流れ、大規模な農業が行われているイメージは誰でも想像できると思われます。
日本はというと、国土は山ばかりで、川は短くて急流です。
歴史的に水害に悩まされてきましたし、少しでも移動しようとすると山に阻まれます。
気候面においても日本は台風が頻繁に上陸しますが、欧州はそういったことはありません。
これらの諸条件を比較して、GDPに占めている公的固定資本形成が同程度というのは、国家ごとの成り立ちを無視していると言われても仕方のない事です。
さらに、現在の日本はインフラストラクチャーの60年経過による劣化が問題となっており、新規の工事以外にも整備にすら多大な需要があります。
インフラは生活と産業の基盤となるものです。
この崩壊は、当然ながら他の分野へ非常に大きな影響を及ぼします。
東京一極集中も問題視されますが、これもインフラの未整備によるものです。
なぜ東京に全てが集中するかといえば、そこに全てが揃っているため、高い地価などのデメリットを差し引いても利便性というメリットが上回るからです。
インフラ整備によって離れた地域が短時間で接続されると、混雑した場所でなくても仕事や生活が成り立つようになります。
そうすると商業圏は緩やかに拡がり、地方に仕事や人口が分散するようになります。
これは安全保障上も非常に重要です。
内部で有機的に繋がっているというのは防衛力を高めます。
状況に応じて戦力を機動的に動かせるためです。
インフラはどこまで整備しても他国へ攻め込む力には使えません。
もし、軍事費の高騰を嫌いつつ、国家の安全保障も高めたいという方々がおられるなら、本来、インフラの整備にこそ注力するよう声を上げるべきです。
現在の日本には財政的制約がありません。
予算に悩む必要がないのです。
いまこそ、インフラ整備に力を入れるべきなのです。
日本の資産家が海外に資産を持って逃げるとどうなるか?
日本のお金をたくさん持っている人が、海外へお金を持って行こうとすると、どうなるのでしょう。
その時、日本にいる日本人に何か影響があるのでしょうか。
逃げ出す方がどこの国へ移動しようとするのかわかりませんが、日本円は日本国内でしか通用しません。
なので日本円と、移動先の外国の通貨とを両替しなければなりません。
そうすることで初めて、逃げた先でもお金の価値を活かせます。
この時、日本円がこの世から消え去るわけではありません。
両替されたことで、銀行に日本円が渡ります。
この日本円は、銀行が通常通りに運用することになります。
なにせ、銀行がお金を持っていても一円も生み出してくれません。
銀行はお金の貸し借りで利ざやを稼がなくては成り立たちません。
運用先としては、景気が正常であれば民間に貸し付けるでしょうし、不景気ならば貸し手がいないので国債などを買うことになります。
現在のように不景気であれば、国債の価値が高まり、政府が国債を発行するための下地が整うこととなるでしょう。
お金というものは、中央銀行の金融政策以外ではそうそう無くなることはできないのです。
誰かが持って逃げても、日本円は日本国内でしか使えず、域内に留まるように出来ています。
日本において経済を語る際に『国家の信用』というものを殊更に気にされる方がおられます。
この国家の信用ですが、具体的にどういった指標なのか、よくわかりません。
良く使われる文脈から察するに、民間の格付け機関による国債の格付けの昇降に一喜一憂している際に見かけるように思います。
格付け会社は公的な機関でもなんでもなく、ビジネスを営む民間の会社です。
そこが示す、自分達への評価にいちいち及び腰では国家としては主体性が無さすぎます。
そもそも、格付け会社はサブプライムローン問題の時に大変危険な債務担保証券にトリプルエーの評価を付けて世界中に売りさばき、後に債務の焦げ付きが見え始めると一気に評価を引き下げて危機の引き金を引きました。
本業の格付け能力もまったく確かなものではないのです。
もちろん民間企業ですから、国際的な経済危機が起こっても責任は取りません。
格付けを信じて勝手に行動した人々が悪いというスタンスです。
このような格付け機関の評価をありがたがり、国家の経済政策の指針にしてしまうというのは、前回の経済危機から何も学んでいないばかりか、主権の在り処についての意識の希薄ささえ見えてしまいます。
日本円も日本国債も現状では非常に安定的で、ちょっとやそっと何かが起こってもどうにもなりようもない状態です。
政府は国民に向かってどうどうと財政政策を実行しても大丈夫です。
日本銀行にとって、『お金』とはなにか?
日本銀行にとって、『お金』とはなんでしょうか?
答えは私たちが持っている紙幣を見れば書いてあります。
そこには日本銀行券と印刷されていますね。
つまり、これは日本銀行にとっては借金なのです。
お金というものについて、個人の視点では貯まれば貯まるだけ良いような気がしますが、経済全体で見てみるとそうではありません。
誰かの借金を手元に溜め込んでいるだけですから、どこまでいってもプラスマイナスゼロなわけです。
経済で見れば、お金はいろいろな所で使われて常に動いている状態が好ましいのです。
日本銀行の貸借対照表(バランスシート)において、現金は負債として計上されています。
そして資産側には国債などが計上されています。
もちろん、国債は政府にとっては負債です。
また、現金は民間企業にとっては資産です。
経済を大きな流れで見る時に、ここが非常に重要です。
誰かがお金を借りた時は、誰かが絶対にお金を貸しているのです。
タダでお金だけ出てくるとこはありえません。
この事実さえ知っていれば、政府が黒字を溜め込むことを最優先目標としてしまうことがいかに愚かか理解できると思います。
政府の財政黒字も財政赤字もあくまで手段です。
それは目標にはなりえません。
日本銀行は政策金利を引き上げることで、民間がお金を借りにくくし、物価を抑制できます。
逆に金利を下げると、お金を借りやすくなって物価も上がりやすくなります。
また、日銀は民間の銀行が保有する国債を買い取り、代金を日銀預け金として民間の銀行が持つ口座に増やすことで、市中の日本円の量を増やせます。
これも逆に保有する国債を売ることで、日銀預け金と相殺し、通貨の量を抑えることもできます。
この組み合わせによって日本銀行は国内に金融政策を効かせることができます。
現在は政策金利を下げ、かつ、金融緩和によってお金の量を増やしています。
金融面ではインフレ圧力をかけつづけていると言えます。
これ以上の金融政策は不可能で、あとは政府の財政政策さえあれば、経済をインフレ好況へ誘導できます。
政府は財政政策で、公務員給与削減、公共投資の削減、増税などができます。
これらはインフレ対策で、景気を冷ます効果があります。
逆は何かといえば、公務員を増やしたり給与の増額、公共投資を積極的に行う、減税などです。
これこそデフレ対策です。
デフレ対策の為に国債を発行することで日本銀行が発行してくれている日本円を集め、それを政府支出や公共投資に使うのです。
お金のみを信仰してしまうと、金融政策と財政政策があべこべになってしまいます。
経済用語から見る日本経済、国債編
『日本国債』でよく話題に上がるのが、「国債の金利の支払いで政府が破綻する」という議論です。
ギリシアの例などと比較することで日本も危険であると訴えるこの論は、果たして正しいのでしょうか。
まず、外国向けに発行された国債について。
こちらは全体の6%に過ぎません。
なぜ外国向けの国債が問題になりやすいかと言えば、国債が外貨建てになっている場合があるからです。
外貨建ての場合は、支払いに外貨を使用しますので、外貨の準備が不足してしまうと支払いを履行できないという局面があり得るわけです。
ところが、日本は外国向けの国債も含めて、全て日本円建てで発行されています。
政府は通貨発行権を持っているため、日本において日本円が枯渇することはあり得ません。
よって、日本円建ての日本国債が債務不履行になることはないのです。
ここで少し疑いを持たれる方もいるかもしれません。
仮に、日本国債の大量の利払いが発生して、それを補う為に通貨をたくさん発行したとして、それによって何か良くない影響があるのではないか。
日本円が市場に大量に供給されたとして、影響があるとすれば、インフレ期ならばインフレが促進される可能性はあります。
いわゆるインフレ圧力ですね。
しかし現在の日本はデフレ不況。
現実に、日本は金融緩和によって市中にお金を増やしましたが、金融政策単独ではデフレを改善することさえありませんでした。
こうして見ると、ではなぜギリシアでは危なかったのでしょうか。
ギリシアは、ギリシア国債を共通通貨ユーロ建てで発行していたためです。
共通通貨は、自国内で自国政府の意思では発行できません。
よって、国債の支払いに困った時も、インフレ圧力を甘受して通貨発行という手段さえ取れないのです。
これは、ギリシアだけの問題ではなく、ユーロに加盟するスペインなどでも全く同じ問題が起こっています。
共通通貨システムとは、自分の国の財政・金融政策の主権を多国間に委ねるシステムということになります。
自分が困っても、自分でなんとかすることができなくなるのです。
ここまで自国通貨建てと、他国通貨あるいは共通通貨建ての違いについて見てきましたが、他の論はどうでしょう。
例えば、国債の発行を続ければ市中に国債が溢れていずれ買い手がつかなくなる、というものがあります。
この場合は、日本銀行に買い取ってもらえば済みます。
いわゆる日銀の買いオペです。
国債の日銀引き受けを行うと、政府は利払いからも解放されます。
日本銀行は日本政府が株式の55%を保有する子会社であるため、金利が連結決算で相殺される為です。
そもそも、現在、日本国債10年物の金利は0.02%で世界屈指の低さを誇っています。
金利が低くて利回りが悪くても買われるから、より金利が下がるのです。
市場から日本国債の需要が消え去ることはまず当分ありません。
このように、日本国債は世界的に見ても非常に安定的な資産で、かつ、日本政府が支払いに困ることもあり得ません。
国債の増発は、ニュースなどで殊更に危険視されますが、よく見れば普通の経済活動に過ぎず、むしろ日本は他国と比べて非常に安定しているということがわかります。
経済用語から見る日本経済、バブル編
日本において、少しでも景気が上向くことを、過度に恐れる方がいます。
『バブル』の定義がよくわかっていない為に、好景気と混同してしまっているのだと思われます。
健全な経済成長に必要な好景気は、果たしてバブルと同じなのか、見ていきましょう。
一般的なバブル経済のイメージはどんな感じでしょうか。
なんとなく不自然に不動産価格や株価が上がる、ぐらいかもしれません。
不動産価格や株価の上昇がどういった状況下であればバブルなのか、について押さえていないと正常な経済成長についても怯えて過ごさなくてはならなくなってしまいます。
現実において、バブルの状態では不動産価格や株価は、民間の借金による投機によって値上がりします。
この投機、という言葉もよくわからないかもしれません。
投資、と似ていますが、どう違うのでしょう。
投機とは、将来の価格上昇を見込んで行う転売行為です。
明日200円になると確信しているリンゴを、今日100円の内に買っておき、明日になったら転売して100円の差額を得ようという行為ですね。
見てわかるように商品そのものに対して所有しようという意思はなく、売買差額を得る為の道具として使っているに過ぎません。
対して投資はどうでしょう。
投資とは、将来の資本を増加させる為に現在のリソースを投入する行為です。
企業が商品をたくさん作るために設備投資したり、社会人の方が自分への投資として英会話スクールに通ったりするように、将来のメリットのために現在で支払う行為というわけです。
当然、購入した商品そのものに目的があります。
投機と投資の意味合いが大分違うことがわかりますね。
では先ほど、みんなが借金して投機をするからバブルになる、と書きました。
そうではない場合、つまり健全に不動産価格や株価が上がる状態はどういうものでしょうか。
日本の多くの企業で収益が改善し、従業員の方々も年々給与が上昇しているとしましょう。
生活状態が次第に裕福になり、その結果、不動産や株価を購入するにあたり、自分の所得の中から費用を捻出している状態です。
日本中で好景気ならば確かに多くの方が買い求めるでしょうから、不動産価格も株価も上向くことでしょう。
ですが、これはバブルではないのです。
購入にあたって、所得という上限がある為です。
これが、借金を元手にした投機だった場合。
まずお金を借り、商品を購入します。
値上がりしてから転売し、差額で借金を返す、もしくはその信用に上乗せしてさらに借金から投機を繰り返す。
これはバブルです。
この通り、上限無く売り買いが進んでしまうため、不動産価格や株価が際限なく上昇します。
もちろん、いつかは信用とともにバブルも崩壊するわけですが、その時がいつになるか誰にもわかりません。
ここまで見てきたように、バブル経済と、正常な好景気は似て非なるものであります。
経済が好調になったから、あるいは地価や株価が上昇局面にあるからといって、全てがバブルではないのです。
好景気まで否定してしまうと、豊かさも将来の安全も捨てることになってしまいます。
好景気そのものはまったく怖くありません。
安心して、豊かになりましょう。
経済用語から見る日本経済、バラマキ編
ニュースやワイドショーなどで良く耳にする経済用語(?)としては『バラマキ』という言葉が挙げられるのではないでしょうか。
使い勝手がいいのか、政策を中傷する際に頻出します。
バラマキ、と聞くとイメージも湧きやすく、政策の中身を理解しないままでもなんとなく悪印象を植え付けられます。
では、実際にはバラマキに該当する政策はどういったものになるのでしょう。
逆に、バラマキと言われたものの本当は真っ当な経済政策であるものもあるのか、見ていきたいと思います。
政府のお金の使い方は大雑把に分類して2種類しかありません。
- 政府最終消費支出と公的固定資本形成
- 所得移転
以上です。
一つ目の政府最終消費支出、そして公的固定資本形成は昨日の記事内で軽く触れた項目です。
どちらも支出面のGDPに載っているものになります。
政府最終消費支出は、公務員給与の支払いや、国民の医療費の政府負担分の支払いなどです。
公的固定資本形成は、道路・港・ダム・学校などを作る、いわゆる公共投資です。
昨日の記事で、デフレ不況下では民間の支出などが減るので、国全体としての支出を維持・増加するために政府の支出を増やす経済政策は是であるとしました。
つまり、デフレ不況下では上記政策は経済活性化政策としては肯定されます。
これらが無分別に『バラマキ』であると解されていることはないでしょうか。
仮に、国民に全く寄与しない形で道路やダムが作られ、誰も存在しない地域に公務員を増員し給与を増額したとしても、仕事として存在した以上はGDPが増えます。
これは、デフレ不況を改善する圧力を持つ事になります。
もちろん、実際には国民に何ら寄与しない政策など実施されることはありません。
つまり、政府最終消費支出や公的固定資本形成はバラマキではないのです。
ではもう一方はどうでしょうか。
所得移転系の経済政策です。
こちらはGDPにはなりません。
支給しただけでは誰も付加価値を生産していないためです。
振り込まれたお金が実際に使用されるかどうかは誰にもわからず、経済政策としては非常に中途半端です。
貯金しておいていつ使うかわからない、ということもありえるからです。
お金が使われないからデフレ不況であるにも関わらず、そこへお金を渡して、使われるかどうか運に任せているわけですね。
GDPとしても、この所得移転分を政府支出として支出面のGDPに入れてしまうと、生産面や分配面と釣り合わなくなってしまうのです。
つまり、単なる経済政策としてだけ見れば、GDPを押し上げる効果を持たない所得移転政策はバラマキに該当する可能性があります。
しかし、社会保障を経済政策の面からだけ見るというのは不適当です。
ここをバラマキと断じて、切り捨ててしまっては国が成り立ちません。
逆に、ベーシックインカムは所得移転政策の極地にあたります。
これは、なぜかあまりバラマキと指摘されていないように思います。
所得移転政策の中で少しマシなものとしてはエコカー減税があります。
エコカー減税そのものは所得移転ですが、必ず実際の消費に連動するので、運任せの政策よりは実効性があるためです。
見てきたように、現在日本では、バラマキでないのにバラマキと呼ばれている政策と、バラマキであるにも関わらずバラマキと指摘されずに実行される政策が混在しています。
政府がお金を使うことの全てがバラマキなのではない、ということだけでも知って頂ければ幸いです。